パティシエ・シマ「バスク・オ・マロン」
タカナシミルク
秋になると、焼き菓子のシーズンがやってきた!という気持ちになります。特に、栗を使った焼き菓子は、この季節になると必ず食べたくなるもの。特に、個包装の小さなものではなく、切り分けて皆でいただくホールサイズの焼き菓子を前にすると、何とも言えないときめきを感じます。
このお菓子は、もともと、フランスの南西、ピレネー山脈を挟んでスペインにまたがる国境地帯にバスクと呼ばれる地域があり、その地の伝統菓子「ガトーバスク」を元にしたもの。1998年、東京・麹町に創業したフランス菓子店「パティシエ・シマ」のオーナー、島田進シェフによるアレンジで生まれたオリジナルのお菓子です。
私も、以前にバスクを訪れた時には、現地の菓子店で様々な「ガトーバスク」をいただきました。定番は、ざっくりと焼き上げた厚焼きのクッキーのような生地の中に、カスタードクリームを詰めて焼き上げたもの。現地で獲れる黒いさくらんぼのジャムを入れて焼いているものなども見られます。中に渋皮煮の栗を入れているものにはフランスでも出会ったことがなく、こちらでいただいたのが初めて。それでいて、マロングラッセなどとも異なる和栗の渋皮煮の品のよい甘みと奥行きある味わい、ほっくりした食感などが、何とも言えずこのお菓子にマッチしていて、フランス人にも食べてほしい!と思うような新しい発見でした。
島田シェフは、日本におけるフランス菓子専門店の草分けである「A.ルコント」で修業を始めた後、渡仏して腕を磨き、帰国後もフランス菓子文化の浸透のために尽力されてきた方。フランスの伝統菓子や食文化を伝える活動も積極的に行っていらっしゃいます。そんな島田シェフがよく口にされる言葉は「温故知新」。伝統を見直し、しっかりと理解したうえで、それに新たな息吹を与えるというこの言葉は、まさにこのお菓子そのものだと感じられます。
バスクの現地でも、これほど端整なガトーバスクには出会えなかったというほど、見た目も美しい姿。表面に刻まれた格子模様にも伝統的な意味があり、バスクを構成する4つのエリアと共に、万物の源である空気・水・土・火の四大元素を象徴する「バスクの十字架」マークを表していると言われています。
香ばしい焼き色のクッキー生地にザックリとナイフを入れると、しっとりとやわらかなカスタードクリームの層が現れ、その中に渋皮煮の栗の断面が登場。生菓子の華やかさとはまた違った、渋味ある佇まいにしばし見惚れてしまいます。ザクザクした歯応えと、日本人の好むしっとり感を両立させた、島田シェフならではの匠の技。フランスの各地に伝わる伝統菓子の面白さを感じながら味わうことができます。
お友達を訪ねる時の手土産や、ホームパーティーなど人数の集まる時に用意して、皆で一緒に楽しみたい一品です。
更新日:2016年09月20日
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