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嶋啓祐さん(フードビジネスデザイナー)
遠くの水平線を連想する美しいフォルムに和菓子の造形美を見る

少し前になりますが、2013年に公開された宮崎駿監督のアニメ映画「風立ちぬ」のシーンに登場するお菓子「シベリア」。昭和初期の頃から主に東日本で流行ったカステラと羊羹をミックスした、つまり和洋をあわせたお菓子だったのではないだろうか。それはきっと「ハイカラ」として、当時のグルメに人気があったに違いないと想像してしまいます。
それを現代に蘇らせたのが、伝統的和菓子で有名な島根県松江の風流堂です。このお和菓子の魅力はその美しさにあります。シベリアの由来は諸説ありますが、私が感じるのは水平線。遥か彼方まで見渡せる先にある風景は、ほんのりとした甘さを纏う伝統的スイーツの世界に思えるのです。
風流堂のシベリアは、地元雲南市吉田で平飼いで育てられている「たなべのたまご」を使用。さらに国産小麦に加えるのは木次乳業の「ブラウンスイス牛乳」。そして カステラに挟まれるのは備中大納言の自家製こし餡。これ以上ない素材を組み合わせて作られる、これぞ「こだわり」の作品といえるでしょう。上品に焼き上げたキメ細かい生地が特徴です。しっとりした食感と上品な甘さを表現しています。
いま、6個入りの箱に入った「シベリア」を前にしているのですが、とにかく美しいのです。形がきちっと揃って6つの水平線が3本に揃う姿は飾っておくだけでもアート感がしっかり。受け取った方が箱を開けた瞬間に「おっ!」と思うかもしれません。
お正月の手土産やギフトにはぴったりかもしれません。自宅で楽しむときには、コーヒーと合わせると苦味と甘味がすっと溶け合います。紅茶に合わせると餡の甘みが紅茶の香りとともに、さらに上品に変わっていくでしょう。そして緑茶。カステラの上品さを引き立て、国宝松江城でお茶を楽しむ松平の殿様気分になるかもです。
お茶と和菓子文化が息づく山陰は島根県松江。国宝松江城下には和菓子の有名店が並びます。そのなかでも風流堂の「シベリア」は気品と上品さ、そして優しいおいしさを併せ持つ、この季節にぜひおすすめしたい逸品です。
嶋啓祐さん(フードビジネスデザイナー)
全国の食材や加工品をPRするフードビジネスデザイナー。自然、風土、生産者、素材、そして料理人とその先にいる顧客、食に関わるすべての方が幸せになるような「フードデザインによる地方創生」を仕事にしている。おとりよせの達人ほか、02年よりオールアバウトにてフレンチガイド、ぐるなびのippinキュレーターを務める。北海道出身。
[ウェブサイト] All About フレンチガイド