お取り寄せの達人のオススメ!
北村貴さん(フードマーケッター・フードソムリエ主宰)
地域の誇り「六花亭」のお菓子セット。トレードマークの北海道の野花がついた包装も素敵。
六花亭の本社は札幌と思われている方も多いことと存じますが、実は本店は私が住む十勝・帯広にあります。子供のころから慣れ親しんだ味で、十勝の子供たちの味覚形成に大きな影響を与える店でもあります。
私が子供のころは、函館の千秋庵というお店の流れを組む「帯広千秋庵」という名前で営業していましたが、「大平原(マドレーヌ)」や「ひとつ鍋(餡もなか)」、「ホワイトチョコレート」などのオリジナルお菓子を完成させた同店は、その技術を以て1977年に独立、今の「六花亭」となりました。また、この独立を記念して作られたのが、現在も同店を象徴する「マルセイバターサンド」なのです。
マルセイバターサンド発売当初のことは、今でも鮮明に覚えています。濃厚で、サクサク!二枚のビスケットに挟まれたバターとホワイトチョコレート!なんて美味しいものに出会ったのか!と、当時10歳だった私は、毎日母に買ってくれとせがみました。
そんな六花亭のお菓子の背景には、十勝地方の開拓の歴史や豊かな農業生産があります。例えばマルセイバターサンドのパッケージに使われているのは、十勝を開墾した「晩成社」のシンボルマーク。前述のひとつ鍋の名前の由来は「豚とひとつの鍋を持って開墾した」と言われる、当時の生活を象徴する言葉です。
また十勝地方は、お菓子の原料に欠かせない砂糖を作る「ビート」の生産量日本一、更に質・量共に日本一を誇る小豆があり、酪農地帯である土地には豊富な乳製品があります。こういった背景をベースに出来上がった地域No.1のお店が六花亭なのです。
ところでみなさんは六花亭といえば「マルセイバターサンド」をすぐにイメージされると思いますが、地元の私たちにとっては、豊富な品ぞろえが魅力のお店という印象なのです。
和菓子、洋菓子、焼き菓子、生菓子、氷菓・・・。現在も100種類以上のお菓子が店頭にそろいます。羊羹やどら焼きもあれば、シフォンケーキにおこわまで!また「お菓子は日用品である、地元の人がいつでも口に出来るおやつを提供したい」という考えのもと、地域の誰もが食べやすく・手に取りやすい価格で提供されていることが最大の魅力です。
また、同時に六花亭は地域文化の担い手でもあります。「リッチランド」という焼菓子があるのですが、そこには地元の子供たちが書いた詩がパッケージ1枚1枚に書かれています。「サイロ」(http://www.oda-kikin.com/sairo.html)という名の児童詩誌発行を何十年も続けてきた六花亭では、ここに掲載されたものの中から、パッケージに一部を採用しています。また美術館や音楽、伝統芸能など、田舎にいても一流の文化に触れ、心をはぐくむ機会の提供を継続しています。
そんな六花亭の小田社長のお話を聞く機会に接したとき、「お菓子作り」への考え方を伺うことができました。「手で作る方が良いものは手で、機械か手かで迷ったら、間違いなく手で」と。だから、六花亭の社員さんは自分の手を本当に大切にしています。傷ひとつあってはならないのです。みなさんが口にしたときにどこかホッとする素朴な印象を持たれる理由はこういう点にあるのです。
また、六花亭の「おもてなし力」の高さに驚かれるのではないでしょうか。「おもてなしとはなんですか?」と社長に伺った際に、「誰かのために、自分の時間を惜しみなく使うこと」と答えられました。私はこの言葉を聞いて、ますます六花亭のファンになり、地元誇りと思うようになったのです。
手から手へ人から人へ。これが六花亭の想いです。
今回ご紹介したセットは、豊富な品ぞろえの中から、定番として地元の方々が楽しみに食べているものが詰め合わせになったセット「十勝日誌」です。
アーモンドプードルだけで作られたマドレーヌの「百歳」、前述のもなか「ひとつ鍋」、子供の詩がパッケージに書かれた「リッチランド」、そして同店を象徴する「マルセイバターサンド」など。18種類25個が詰め合わせになった玉手箱が、北海道の野花がちりばめられた包装紙で包まれています。
1つ1つのお菓子にドラマがある、多様な六花亭の魅力を感じながら、是非お召し上がりください。
北村貴さん(フードマーケッター・フードソムリエ主宰)
美味しいものを探求する心は誰にも負けないマーケッター。20年間の東京生活を経て、2004年Uターン。その後2007年に(株)グロッシーを設立し、プロ料理家160人がレシピを提案するサイト「フードソムリエ」を運営している。
[ウェブサイト] フードソムリエ料理家ネット
一般社団法人日本味育協会