お取り寄せの達人のオススメ!
chicoさん(スイーツライター)
あのクレープ名人が本気で作り上げた、「変化する」ミルクレープ
「ミルクレープ」のイメージとはかけ離れた直方体をカットすると、純白にくねくねと重なる、雪山の道みたいなベージュのライン。クレープ専門店渾身のミルクレープは、これまでの概念を覆す衝撃作でした。
「EQUALLY(イクアリー)」はパティシエが作るクレープの専門店。「ル パティシエ タカギ」や「P?TISSERIE ASAKO IWAYANAGI」などで腕を磨いた友納さんは、美しく複雑に食材が調和し合うパフェのようなクレープなど、いつも新しいクレープの喜びに出合わせてくれました。
間借り営業ながら、デパート催事でいつも大行列を巻き起こし、私たちを熱狂させていましたが、2024年5月に初めて自身のクレープリーカフェをオープン。デザートにはもちろん、朝食やランチ、さらには取り寄せできるショコラサンドクレープなど、次々と新作を発明、さらにクレープの世界を広げています。
そうした自由な冒険が叶うのは、ベースとなる生地のおいしさあってこそ。シンプルだからこそ基本素材のおいしさがダイレクトに出る生地には、「卵なら卵らしい、ミルクならミルクらしい旨味を感じる、でも他の材料を邪魔しない素材を探しました」と友納さん。相模原の卵、北海道ミルク、カルピス特選バター、フランス産と国産を独自にブレンドした小麦粉を使い、黄金色のクレープを焼き上げていきます。
そんな珠玉の生地を使って先日リリースされたのが、パティシエクレープの真骨頂、ミルクレープ! 「ミルクレープのおいしさはどこにあるか? に向き合い、試作を重ねて突き詰めたんです」。その答えは……なめらかさ、口溶け、生地とクリームの一体感。そして、上から下へと層を切っていく楽しさにあったとのこと。
食べながら自分の中の思い出が蘇る、そんなショートケーキ的ノスタルジーもあるから、デコレーションはあえてシンプルに。飾らない直方体の中で、しっかり理想を叶えるアップデートを遂げていました。
焦がしバターケークを土台に、ホワイトチョコガナッシュとクレープを重ね、さらにフロマージュブランクリームとバニラたっぷりのディプロマット(カスタード+生クリーム)、2種のクリームもおり重ねて。岩城島のレモンで作ったコンフィチュールやパリッと板状のホワイトチョコでアクセントをつけつつ、ライムゼスト(果皮)のナパージュでさらなる爽やかさもまとわせます。
これを従来のクレープみたいにクリームを塗っては重ねてを繰り返すやり方ではなく、屏風折りで重ねるのは、あえてクリームとクリームの層、生地と生地が重なる部分が混在する、動きを作り出せるから。そうすることで、食べ進めるうちに生地をより感じるところ、クリームをたっぷり味わえる部分と、変化も楽しめる、というわけです。
フォークよりおすすめはスプーンでとのことで、スプーンでいくと、スルスルとなめらかに入る感覚がなんだか気持ちいい。口にすると、チーズケーキみたいなフロマージュブランの酸味とまろ味に、いつもより少し厚めに焼き上げた生地の柔らかな香りがふんわり。
さらに、パリパリのチョコプレートとガナッシュのホワイトチョコが食感とコクのアクセントに。キュンとくるレモンの酸味は爽やかに、ミルフィーユ全体の輪郭をくっきりと浮かび上がらせてくれるよう。
食べる部分によって変化していく、ほのかな酸味と甘みのグラデーションも心地よく、ミルクレープの次の世界へ私たちを連れ出してくれます。
chicoさん(スイーツライター)
スイーツトレンドに精通し、「anan」や「Hanako」、「ELLE goumet」はじめ多数の雑誌やWeb、TVでスイーツ記事の執筆や特集企画監修・出演を行うほか、ギフトのセレクトショップ、ECサイトなどでスイーツ監修も手がける。「anan」で「Food topics 〜chicoのお菓子な宝物」、「SALUS」で「もらって嬉しい手土産スイーツ」を連載中。『東京の本当においしいスイーツ探し』シリーズ監修。共著に『東京最高のパティスリー』。
[ウェブサイト] Twitter「anan」連載中「chicoのお菓子な宝物」
「SALUS」連載中「もらって嬉しい手土産スイーツ」