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平岩理緒さん(スイーツジャーナリスト)

冬のおもてなしに!師匠への思いを込めた、スパイス香るフランスの伝統菓子

 パン・ド・エピス 1/4

クリスマスを迎えるシーズン、ヨーロッパ各国では、スパイスを使ったお菓子や飲み物が色々と登場します。ドイツのシュトーレンや、ベルギーのスペキュロス、フランスのアルザス地方のベラベッカ、クリスマスマーケットの屋台で提供されるホットワインなど。体を温めてくれるスパイスは、寒いヨーロッパの冬に欠かせません。

「パン・ド・エピス」も、そんな、ヨーロッパの伝統的なお菓子の一つ。フランス語で「スパイスのパン」といった意味で、フランスのアルザス地方やブルゴーニュ地方で、中世から作られてきた伝統菓子です。

兵庫県・明石市にある「パティスリー・クリ」の栗原栄徳シェフが、このお菓子に初めて出会ったのは、芦屋の有名ベーカリー「ビゴの店」での修業当時。日本にフランスパンを広めた職人として知られる、フランス人の師匠フィリップ・ビゴ氏が、本国から持ち帰ったパン・ド・エピスの美味しさに感動!いつか自分の手で作りたいと思ってから20年近く、試行錯誤を繰り返して完成されたものです。

砂糖は使わず、材料の重量の半分が蜂蜜という贅沢な配合。地元の兵庫県稲美町の養蜂家から届く、上質な生の蜂蜜を使用しています。非加熱のため蜂蜜本来の風味や栄養素がたっぷり。この蜂蜜と小麦粉、さらに、アニス、クローブ、シナモンなどの10種のスパイスを蒸留酒に漬け込んだものを合わせて、生地に練り込みます。これを約3ヶ月もの長期間、生蜂蜜に含まれる酵素の力で熟成させてから焼き上げるというからすごい!

重さ約750gにもなる大きなホールサイズも販売されていますが、お試し1/4サイズが登場して、味見しやすくなりました。

このように手間隙のかかる昔ながらの製法を、あえて再現した栗原シェフ。実は今年2018年の9月、栗原シェフにとって大切な師匠であるフィリップ・ビゴ氏がご逝去され、多くの関係者やファンが哀悼を捧げ、改めてそのご功績を称えています。そんな師匠から教えられた、フランスの伝統的な食文化に敬意を表し継承していくことの意味が、栗原シェフの心に深く刻まれているのです。

パン・ド・エピスのお勧めの食べ方は、5mm程の薄切りスライスだそう。私も、フランスのアルザスやブルゴーニュのパン・ド・エピスをそれぞれ食べたことがあります。パティスリー・クリさんのものは、本場同様、ずっしりと重みはありますが、しっとり、もっちり感がより強く、生地を噛みしめると、咀嚼するごとに、じんわりとスパイスの風味と香りが広がっていきます。

軽くトーストしてカリッとさせても、いっそう豊かな香り立ちに!カシスや木苺のコンフィチュール、柑橘のマーマレードとも相性がいいですし、チーズをのせたり、レバーペーストを塗ったりして、カナッペ風にしてもお洒落です。ワインやブランデーともよく合い、これからのホリデーシーズンのパーティーやおもてなしにも、ちょっと珍しく気の効いた一品として活躍してくれますよ。

平岩理緒さん(スイーツジャーナリスト)

スイーツ情報WEB「幸せのケーキ共和国」主宰。スイーツジャーナリストとして全国銘菓に精通し、TV・雑誌等各メディアで発信。「All About」スイーツガイドも務める。イベント企画や司会、企業や自治体のスイーツ開発など幅広く活動。セミナーや製菓系学校での講師も務める。TVチャンピオン「デパ地下グルメ選手権」優勝。著書に『東京最高のパティスリー』(ぴあ)、『まんぷく東京 レアもの絶品スイーツ』(KADOKAWA)等。『厳選スイーツ手帳』・『厳選ショコラ手帖』(世界文化社)を監修。

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『まんぷく東京 レアもの絶品スイーツ』&『東京最高のパティスリー』
監修本『厳選スイーツ手帖』(世界文化社)
監修本『厳選ショコラ手帖』(世界文化社)
「おいしいマルシェ」(「人気店の定番スイーツ」vol.65)
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